ハースストーンを遊ばなくなった理由

 ネットの話題の鮮度が持つのはせいぜい2~3日程度というふうに思っているんでだいぶ時期を逃した感がありますが、以下の話題について。

 

hs-exp.jp

 

 

 まさに自分は「かつてハースストーンを遊んでいたものの今は全く遊んでいない人間」です。別に生活環境の変化等で時間を取るのが難しくなり自然と遊ばなくなったというわけではなく、意思を持って遊ぶのを止めました。

 知り合いやツイッターのフォロワー以外の方もこれを読むかもしれないので一応自分がどんな人間なのかについて説明しておくと、カードゲームはMTGを長く(かれこれ15年以上)プレイしていて、ハースストーンはクラシック時代のミラクルローグ全盛期の頃に始めました。確か始めたころは犬が3マナで鳥が2マナでしたね。わりと初期の頃からやっていますが、といっても毎月レジェンドランクに到達するまで頑張るとかレジェ上位を目指して走るとかいったことをするほど熱心なプレイヤーではなく、レジェ到達経験も1~2回しかありません。要するにカジュアル勢。全く触らない月もあるものの、気が向いたらランク5になるくらいまで回すという感じのゆるい付き合い方を長く続けていました。

 

 

■最初の意識的引退

 

 ウンゴロ環境の頃は楽しく遊んでいました。アグロ好きなのでマーロックパラディンやアグロドルイドをよく使っていた記憶がありますが、他にも秘策メイジ等全部で5個か6個くらいデッキを作って色々と回していました。

 玉座の騎士団環境はほとんど触っていなかったものの、意識的にプレイしないようにしていたわけではなく、なんとなく他の事優先だっただけです。

 そしてコボルト環境。しばらく触っていなかったのでネットでデッキを探し、ウンゴロ環境でよく使っていたマーロックパラディンが動員の追加もあってまだ有力デッキのひとつらしいのでそれを組み、ランクマッチへ。そこに“奴”が現れます。

 

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当時5コストでした

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当時8回復してました

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 キューブロック。

 中盤まで有利にゲームを進めて、地獄の炎もケアできていると思ったところにわずか6マナからなされる8回復+計18点分の挑発。

 それでも頑張ってこの18点分の挑発を全部倒すと…

 

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sine

 全員、復活w

 完全にこちらの努力を嘲笑っています。普通の殴るデッキではどうしようもありません。

 

 

 他のデッキが使うカードも、

 

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 何故か全体3点に3/3が付いていたり

 

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当時6コストでした

 

 何故か6マナで4/4と10マナミニオンが出てきたりと意味不明。

 

 完全にコストとパワーレベルの設定が間違っているとしか思えない壊れたカードたちの応酬に僕の心は付いていくことができませんでした。頑張って有利な盤面を築いたと思っても一瞬で卓袱台返しされる体験を繰り返した先にあったのはストレスと無力感だけです。

 謎めいた挑戦者やレノジャクソンに耐えられた僕も流石に心が折れました。ゲームがつまらなすぎて具合が悪くなっていることに気付いたとき、初めて意識的にハースストーンから離れることに決めました。

 

 

 

■そして引退へ

 

 とはいえカードゲームにおいて一時的に荒れた環境になってしまうなんていうのはよくあることです。「この環境つまらないから遊びたくないなあ」と思ったときはただ待てばいいのです。ナーフが入ればきっとまた楽しいゲームが戻ってきます。

 そして実際にキューブロックのパーツや性悪な召喚師はナーフされることとなりました。これで楽しいハースストーンが帰ってくるぞ…!! 意気揚々と久々のログインをした僕を待っていたのは…

 

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 マナ加速からマスターオークハートどーん!

 

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 挑発2体とドラゴン孵化師どーん!

(9マナのカードが9マナのカードを呼んでくる…????)

 

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 エンドに眠れるドラゴンどーん!

(9マナのカードが呼んできた9マナのカードがまた9マナのカードを呼んでくる……???????)

 

 そして一連の動き(←9マナ払ってカード1枚使っただけ)で登場した計23点分の挑発をやっとの思いで突破すると…

 

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 ハドロノックスを自然への回帰でサクって~~

 挑発ミニオン、全員復活w

 

 キューブロックと同じじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 詳しい人からすると挑発ドルイドはキューブロックみたいに支配的なデッキでは全然ないよとか言われるのかもしれませんが、キューブロックが嫌でハースストーンを離れていた人間からするとこの動きをされるのは再び見切りを付けるのに充分でした。ハースストーンを面白く感じられなくなった原因はごく一部の数枚のカードにあるのではなく、もっと幅広くあるのだと気付かされたわけですから。

 

 一応そこで完全に止めたわけではなくメカメカ大作戦のリリース後に少しやってみたのですが…

 

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当時は5コストでした

 

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 やっぱり延々と挑発ミニオンを殴り続けることを強いられるなこのゲーム!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 というわけでそれが最後のハースストーンのプレイとなってしまったのでした。

 今思うとヘドロゲッパーの突破に苦労していた時代が懐かしいですね。

 

 

 

 

 

■自分がハースストーンに復帰するには

 

 冒頭に貼った記事ではハースストーンから去っていったプレイヤー達にゲームに戻ってもらうにはどうするべきかということが語られ、大会モードの実装や新フォーマットの追加などでマンネリを打破すべきではないかということなどの意見が紹介されているわけですが、そういった新しい取り組みがなされても少なくとも僕は復帰しません。

 なぜなら僕がハースストーンを遊ばなくなったのはゲームを面白いと思えなくなったからで、ここで言う面白くないというのはマンネリで退屈という意味ではなく、ストレスフルで不愉快だという意味だからです。面白さが足りないのではなく、つまらなさが多すぎるのです。

 いくらか新鮮味のある遊び方ができるようになったところで、そもそものゲームがストレスフルなままなら遊びませんよ。

 

 ただし、これをやるならきっと復帰するだろうというものはひとつあります。MTGオールドスクールフォーマットのように黎明期のカードのみで遊ぶフォーマットの追加です。もちろん最近になってナーフされたベーシックやクラシックのカードは元のまま使える仕様で。期間限定でいいんでこれをやってくれたら必ずまたログインするでしょう。

 要するに玉座の騎士団以降のカードにゲームをつまらなくするものが多すぎて完全に嫌になってしまったというのが現状なので、そうなる前のハースストーンが遊べるなら僕はおおいに喜んで戻ります。

 

 あと現実的なところだと、今あるカードがすべてローテーション落ちしたタイミングで環境の評判がよければ普通に復帰するでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■自分がゲームに求めるもの

 

 ここから先は余談です。自分はどういった条件が満たされていればそのゲームを面白いと感じるかについて。

 

 もちろんゲームを面白くする要因は多々あり、そのすべてを網羅的に語ることはできません。なのでここに挙げるのは自分が特に大事だと思うそのうちの一部です。

 

 自分が特に大事だと思うゲームを面白くするための条件は以下の3つです。

 

 1つめは「短期目標」。

 2つめは「反復的でない体験」。

 3つめは「コントロール感」。

 

 順番に解説していきます。

 

 

 

 

①短期目標

 

 多くの説明は必要ないと思います。人は少し頑張れば手が届きそうな目標があるとつい頑張ってしまうものです。そしてその目標を達成したときに即座に新たな少し頑張れば手が届きそうな目標ができるという連鎖が続くとひたすらのめり込んでしまいます。

 この小さな目標達成を積み重ねられるというのはゲームの楽しさの本質的なところだと言って差し支えないはずです。

 ハースストーンの場合はラダーシステムがプレイヤーに短期目標を持たせるための仕組みになっています。ただしこのラダーシステムはランクリセット後に到達経験のあるランクにまた上がるというのが短期目標として機能しづらかったり、勝率が出ず時間をかけてもランクが上がらなくなってしまった場合もこれまた短期目標として機能しづらくなってしまうなど課題も存在するシステムです。デイリークエストもプレイヤーに短期目標を持たせるための仕組みのひとつですね。

 もちろん新しいデッキの使い方を練習して習熟したり、デッキ構成をブラッシュアップして強くしたりするのを目指すのもまさに短期目標です。

 

 

②反復的でない体験

 

 要するに同じようなことばかり続くと飽き飽きしてつまらなくなってしまうということです。人間は飽きっぽい。

 カードゲームにおいては、新弾が弱く影響が少なすぎて同じような環境が長期間続く、1強環境で同じデッキとしか当たらない、どのデッキにも同じカードが入っていてそれがゲームを決めるため異なるデッキでも似たような印象になる、ドロー等でのランダム性が少なく固定化したゲーム展開ばかりになる、などが反復的な体験となります。こういったことが起きてしまうとゲームはつまらなくなります。

 

 ただ、新しい刺激があれば新鮮でいいのかというとそれもまた違って、例えば映画の場合斬新な筋書きのものよりもストーリーの大枠は王道だけど設定やキャラクターに新鮮さがあるものの方が面白いわけです。全く新しいものよりも馴染みのあるよく知ったものとだいたい同じだけどちょっとだけ違うもののほうがむしろ良い。

 ハースストーンはまさにこれで、誰も見たことのない斬新なゲームではなく、だいたいMTGだけどMTGとはちょっと違うゲームだったから良かったんですよね。

 

 

 

③コントロール

 

 念のため断っておくとこれはカードゲーム用語のデッキ分類のひとつのコントロールとは無関係です。

 

 要するにこれは自分が画面の前に存在する意義を感じられるか、自分の選択のひとつひとつが意味のあるものに感じられるか、とかそういうものです。別の言い方をすると、そもそも選択肢が与えられていなかったり、何をしても関係がなかったりするとつまらない。

 カードゲーム(に限らず対戦ゲーム)において、やり取り、相互作用が重要だと言われる理由はこれです。やり取りのないゲームは自分がゲームに参加できている気がしない。ただ相手がやりたい放題するのを指をくわえて見ているしかないのであればそのゲームから得られるのはコントロール感ではなく疎外感や無力感です。

 

スタンダード|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

 

 この記事は2年前にMTGにおいて実に6年ぶりとなるスタンダードの禁止カードが出された時の記事です。この記事にはなかなかに興味深いことが書かれています。

 当時最強のデッキは白青フラッシュというデッキで、これはほぼすべてのマッチアップで5割以上の勝率を叩き出しており疑う余地なく最強のデッキでした。

 しかし、当時のスタンダードに対してつまらないと不満を抱くプレイヤー達はこの白青フラッシュを問題としていませんでした。彼らの大きな不満の原因は白青フラッシュではなく霊気池の脅威デッキでした。

 霊気池の脅威デッキがどんなデッキなのかというと、上手くいくと4ターン目に10マナ以上のカードをプレイできるというデッキです。相手からすると決められたらどうしようもなく負けです。

 一方白青フラッシュは毎ターンそのマナ域での環境最高レベルのカードを叩き付け続ける典型的なミッドレンジデッキで、メインボードから霊気池の脅威への介入手段も持ち柔軟に戦うことのできるデッキでした。

 より強いデッキは白青フラッシュでした。しかし、白青フラッシュはきちんとゲームに付き合った上でフェアに勝つデッキで、一方の霊気池の脅威は相手と同じ土俵で戦わずアンフェアに勝つデッキでした。

 そして、よりプレイヤーから嫌われたのは霊気池だったのです。白青フラッシュは対戦相手をゲームから疎外しませんが霊気池の脅威は疎外しますから。

 

 僕がハースストーンを遊ばなくなった理由は、霊気池の脅威の時代にMTGを遊ばなくなった人と同じ理由でしょう。6ターン目に9マナのカードが出てくるのは4ターン目に10マナ以上のカードが出てくるのに比べればいくらかマイルドではありますが、本質的には同じことです。そこまでのゲームを順調に進めていても相手が上手くコンボを決めたならそこまでの過程は無意味になります。このようなゲームではコントロール感を持つことはできません。更に悪いことにハースストーンは質の高いAoEや回復、ヘルスの極端に高い挑発などが存在し霊気池時代のMTG以上に簡単に卓袱台返し、突然の詰みが発生するため画面の前に自分がいてひとつひとつの選択を積み重ねている意義が感じられないものになっていました。

 

 冒頭に貼った記事にハースストーンはカードのパワーレベルを抑制していくべきだという意見が紹介されていますが、僕はこれに深く同意します。

 カードパワーが低くなるとゲームが地味でつまらないものになるのでは? と思う向きもあるでしょうがこれは程度問題というものを無視した議論でしょう。要するにプレイヤーがゲームに対してコントロール感を持つのが難しくなるほどに強いカードを出すのはやめるべきだ、というのがここでの主張で、みんながベーシックのバニラを使うような地味なゲームにしろという主張はしていません。

 OTK、コストの踏み倒し、AoEといったものの強さがマイルドなレベルに留まりボードの優位を築くことの価値が高まればプレイヤーはどのカードが展開していくか、どう戦闘するかといった基本的な選択により高い価値を感じやすくなり、つまりコントロール感を得ることができます。そしてそういった範囲内でゆるやかにインフレしていき新鮮さを感じられるような新カードを出していくことは充分に可能だと考えています。

 

 インターネットを見るとゲームの環境やバランス調整に対する不満を簡単にみつけることができます。同時にそういった不満に対して「それはただのお前の好みだろう」「ただの主観だろう」「感情論だろう」という反論がなされているところも見かけます。

 しかし、僕はこういった議論には与しません。不満をよく見ていくとここに挙げた3条件のいずれかが欠けていることに対する不満であることが非常に多い。いつも同じパターンをなぞるのであればこれは「人それぞれ」というものではなく必ず気を付ける必要のある「面白い/つまらない」という感情の本質についての指摘と受け止めるべきでしょう。