ふたつのスタンダードGPの上位デッキまとめ

Grand Prix Lille 2018 | MAGIC: THE GATHERING

Grand Prix New Jersey 2018 | MAGIC: THE GATHERING

 

 先の週末、リール(フランス)とニュージャージーアメリカ)の2ヶ所でスタンダードのグランプリが開催されました。おそらく皆さんトップ8のデッキはチェックしていると思いますが、惜しくもトップ8には残れなかったものの上位入賞を果たしたデッキの分布がどうなっているのかまではチェックしきれていない方が多いのではないかと思います。 

  というわけで、公式で公開されているリールのトップ37とニュージャージーのトップ32、計69デッキの分布を集計してみました。

 

GPリール及びGPニュージャージーの上位デッキ分布

 

■ゴルガリミッドレンジ 18人

 

■ジェスカイコントロール 14人

・《アゾールの門口/Azor's Gateway》型 3人

・《弾けるドレイク/Crackling Drake》型 5人

・その他 6人

 

■イゼットフェニックス 8人

・ドレイクシュート型 3人

・その他 5人

 

■ボロス系 10人

・ボロス天使 6人

・非天使アグロ 3人

・タッチ青ミッドレンジ 1人

 

■白ベースセレズニア 7人

・セレズニアトークン 5人

・セレズニア天使 2人

 

■緑ベースセレズニア 4人

・《発見の道/Path of Discovery》型 2人

・呪禁《セラからの翼/On Serra's Wings》型 2人

 

■白単 3人

・純正白単 2人

・タッチ赤 1人

 

■赤単 2人

 

■青単 1人

 

■緑単 1人

・タッチ黒 1人

 

■ナヤランプ 1人

 

 

計69人

 

 

 

 

■ゴルガリミッドレンジ

f:id:meetsheday001:20181030134403p:plain

 全69デッキ中最も使用者が多かったのは案の定ゴルガリミッドレンジで、その数18でした。ただし、その18のうち13がリールでのもので、ニュージャージーのトップ32に残ったゴルガリは5人にとどまっています。トップ8についてもリールでは2人がゴルガリでトップ8に残ったもののニュージャージーではゴルガリは1人もトップ8に入ることができませんでした。後でまた言及しますが、ニュージャージーでは《トカートリの儀仗兵/Tocatli Honor Guard》をメインに採用した白系ミッドレンジが多く上位入賞しており、ゴルガリにとっては厳しいメタゲームだったようです。

 画像はリールでトップ8に入賞したハビエルドミンゲスのリストです。《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》と《採取+最終/Find+Finality》が3枚ずつ採用されており、同型はこのコンボで制するという意思が感じられます。そして6マナ域を《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》優先にしている都合上《秘宝探究者、ヴラスカ/Vraska, Relic Seeker》は不採用となっています。

 

f:id:meetsheday001:20181030135801p:plain

 ゴルガリは《野茂み歩き/Wildgrowth Walker》と探検クリーチャーを採用した形が主流ですが、このセスマンフィールドのリストでは《野茂み歩き/Wildgrowth Walker》《探求者の従者/Seekers' Squire》が不採用となっており、代わりに2マナ域に《僧帽地帯のドルイド/Druid of the Cowl》が採用されています。ひょっとしたら今後ゴルガリの主流は探検型でなくこのマナクリ型に移行していくのかもしれません。

 ちなみに《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を採用すべきかですが、上位入賞を果たした18のゴルガリのうち《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》採用型は15人、非採用型は3人となっており、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》採用型のほうがより支持を集めているようです。

 

 

 

■ジェスカイコントロール

f:id:meetsheday001:20181030141016p:plain

 第2勢力はこれまた案の定ジェスカイコントロールで、その数14でした。ゴルガリについて、リールでは多くのプレイヤーを上位に送り出したもののニュージャージーではそこまでぱっとしなかったということを書きましたが、ジェスカイコントロールはリールとニュージャージーの間での偏りは見られません。

 画像はニュージャージーで優勝した《アゾールの門口/Azor's Gateway》を変身させて《発展+発破/Expansion+Explosion》や《苦悩火/Banefire》のワンショットで勝利することを目指すタイプのリストです。

 そもそも《アゾールの門口/Azor's Gateway》型というだけでマニアックな感じがしますが、このリストは細部の調整もやり込みが感じられるものになっています。

 ゴルガリに完全に盤面を作られたところからでも一発で捲れる《絶滅の星/Star of Extinction》の採用。《アダントの先兵/Adanto Vanguard》や《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》をスマートに対処できる《封じ込め/Seal Away》を厚めに3枚。《悪意ある妨害/Sinister Sabotage》でなく《イオン化/Ionize》を採用しマナベースの負担を軽減。重ね引くと弱い《薬術師の眼識/Chemister's Insight》を1枚に抑えその分《予言/Divination》を採用しもっさりしにくく。

 サイドボードも《原初の潮流、ネザール/Nezahal, Primal Tide》《活力回復/Revitalize》《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》など目を引くところがいくつもありますし、自信がテフェリーデッキにも関わらず《不滅の太陽/The Immortal Sun》2枚というゴルガリに対する強烈な殺意も印象的です。

 

 

 

 

■イゼットフェニックス

f:id:meetsheday001:20181030143227p:plain

 イゼットフェニックスは計8名が上位入賞を果たしていますが、内7名はリールでのもので、ニュージャージーでは1人しか上位入賞できていません。

 画像はそのニュージャージーでただ1人ベスト8まで登り詰めたリストです。《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam》がモダンでは大暴れして墓トロールを再禁止に追い込むほどだったにも関わらずスタンダードではいまいちぱっとしなかったように、《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》もスタンダードにおいては不安定さが目立つカードです。要するに、デッキの上のほうにいっぱいあると最強だけど下のほうに沈んでいると勝てない。なので、このように《奇怪なドレイク/Enigma Drake》《弾けるドレイク/Crackling Drake》に《最大速度/Maximize Velocity》で速攻を付けて急襲するドレイクシュートとハイブリッドして《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》に依存しない形が自分は好みです。このリストだと《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》を素早く戻すブン回りを実現させる以外に役立ちづらい《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》を非採用としているのも◎。

 

f:id:meetsheday001:20181030144432p:plain

 ドレイクシュートとハイブリッドしない形の中で目を引いたのがこの《ミラーリ予想/The Mirari Conjecture》を採用したものです。まだ使ったことも使われたこともないんで実際の使い心地がどうなのかはわかりませんが、ドミナリアリミテッドではちゃんと活かせるように組めるかというハードルさえ超えられれば相当な滅茶苦茶をするボムでした。カードプールが狭く低速な現在のスタンダードでは《ミラーリ予想/The Mirari Conjecture》こそが隠れたパワーカードなのかもしれません。

 

 

 

 

 

■ボロス天使

f:id:meetsheday001:20181030152428p:plain

 ボロス天使はリールでは1人しか上位入賞できなかったもののニュージャージーではブラネルやオーウェンが使用し5人が上位入賞を果たしました。

 このブラネルのリストはメインから《トカートリの儀仗兵/Tocatli Honor Guard》と《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》がフル投入されている上にサイドボードには《不滅の太陽/The Immortal Sun》2枚とこれでもかというくらいにゴルガリをメタったものになっています。ニュージャージーにおいてリールほどゴルガリが活躍できなかった理由の一端が垣間見れますね。

 もともとボロス天使はアグロに強いデッキで、ゴルガリに対しても勝てるように構築されていますが、ジェスカイコントロールに対してどうなのかは気になるところです。ぱっと見の印象だとサイドボードにも《苦悩火/Banefire》のようなコントロールに強いカードが採用されておらず《アダントの先兵/Adanto Vanguard》をきっちり《封じ込め/Seal Away》されたらもう無理というふうに見えますが…。

 

 

 

■セレズニアトーク

f:id:meetsheday001:20181030153947p:plain

 セレズニアトークンはリールで2人、ニュージャージーで3人の計5人が上位入賞を果たしており、Tier2~3デッキとして存在感を放っています。

 画像のリストについては素直に綺麗に構築されてるなあという感じです。仮に自分で使うとしてもメインボードはせいぜい実質タップインランドの《開花+華麗/Flower+Flourish》を1枚森にするかもなあくらいで特に変更しないでしょう。

 

 

 

■セレズニア《発見の道/Path of Discovery》

f:id:meetsheday001:20181030155020p:plain

 上で紹介したセレズニアトークンが非常に素直な構成なのに対し、こちらのデッキは同じトークン軸のセレズニアながらかなりの異端児という印象を受けます。まさか《発見の道/Path of Discovery》が構築で使われるとは! 《発見の道/Path of Discovery》と《野茂み歩き/Wildgrowth Walker》が揃った状態で《大集団の行進/March of the Multitudes》を撃つと…想像するだけで恐ろしいですね!

 このデッキの白眉はなんといってもメインからたっぷり3枚の《不滅の太陽/The Immortal Sun》を積めることでしょう。横並びデッキなので全体+1/+1の能力を活かすことができ出したその瞬間から仕事をしますし、マナクリと探検のあるデッキなので安定して6マナまで伸ばすことが可能です。他のデッキの場合「アンセムを活かす」と「6マナまで伸ばす」のどちらかは満たせないのでサイドボード止まりにせざるをえない中、ゴルガリに対してクリティカルな《不滅の太陽/The Immortal Sun》をメインから自然に採用できるというのは大きな強みです。

 全体の中ではニュージャージーで2人が入賞しただけに留まりますが、そもそも使用者の絶対数自体がほとんどいないであろう中2人がトップ32に入賞できているというのは成功と呼んでいいもののように思います。もしかしたら今後大きな注目を集める存在となるかもしれません。

 

 

 

■呪禁《セラからの翼/On Serra's Wings》

f:id:meetsheday001:20181030161448p:plain

 《蔦草牝馬/Vine Mare》や《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》といった呪禁クリーチャー、あるいは破壊不能を持てる《アダントの先兵/Adanto Vanguard》に《セラからの翼/On Serra's Wings》を貼れば勝つやろという頭の悪いコンセプトのデッキです。こちらも使用者の絶対数自体がほとんどいないであろう中ニュージャージーで2人がトップ32に入賞しています。

 対ゴルガリのお互い《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》を出し合うマッチアップで一方的に飛行絆魂を得たらイージーウィンできるわけで、見た目の頭悪そう感に反して意外に理にかなったデッキなのかもしれません。

 

 

 

■赤単

f:id:meetsheday001:20181030170115p:plain

 リールでトロフィーを手にしたのはメインから《実験の狂乱/Experimental Frenzy》4枚、《危険因子/Risk Factor》は0という赤単でした。特徴的なのはサイドボードの《宝物の地図/Treasure Map》4で、サイド後は《実験の狂乱/Experimental Frenzy》で勝つという意思が感じられます。《実験の狂乱/Experimental Frenzy》は土地が2枚めくれると止まってしまうのが欠点ですが、《宝物の地図/Treasure Map》は占術でセットできない土地を下に送ってくれます。実際、準決勝の対ゴルガリの試合では相手のライフほぼ原点、場のクロックでも大幅に負けPWまで出されているという状況から《実験の狂乱/Experimental Frenzy》と《宝物の地図/Treasure Map》の組み合わせで逆転勝利を収めています。

 《危険因子/Risk Factor》についてですが、あのカードは順調に押せているときは強烈に強いものの、受けに回るゲーム展開になってしまったり序盤の攻勢をすべてシャットアウトされライフをほぼ削れていないときなんかは酷いカードです。であるなら、ライフを押せないときでもゲームプランを作れる《実験の狂乱/Experimental Frenzy》を優先するというのは理にかなっているように思います。《実験の狂乱/Experimental Frenzy》4積みというのは多いようにも感じられますが、現代の《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent》だと思えば納得がいくのではないでしょうか。

 ちなみに自分としては赤単が優勝したというのは極めて意外な結果でした。赤単は《狂信的扇動者/Fanatical Firebrand》《ギトゥの溶岩走り/Ghitu Lavarunner》《ヴィーアシーノの紅蓮術師/Viashino Pyromancer》といった戦闘力に欠けるスペックの低いカードを多く使用しており、その分地力が低く下ブレで負けやすい、要するに弱いというふうに考えていたからです。

 事実、リールでトップ37に入賞したのは優勝者の他に1人のみの計2人、ニュージャージーのトップ32に至っては0で、リール優勝という華々しい結果こそ残したものの、全体として成功したと言えるのかについては微妙なところです。

 

 

 

■青単

f:id:meetsheday001:20181030173031p:plain

 リールで準優勝したのはこれまた意外にも青単でした。とはいえこちらもまた全体として成功したと言えるのかは微妙なところです。なにしろ2つのGPの上位入賞者計69人の中で青単を使っていたのはたったの1人だけなわけですから…。

 個人的にはゴルガリの影響で《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》の価値が上がっていて、更にイゼットの影響で《溶岩コイル/Lava Coil》の価値も上がっている環境の中《大嵐のジン/Tempest Djinn》をエースにしたデッキを使うというのはかなり無謀な選択に思えますがどうなんでしょう。使ってみた結果見事にボコボコに負けて「I am not Nassif」と言う羽目にならなければいいんですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■まとめ

 

 今のスタンダードは多様性と工夫の余地があるいい環境だなというのがこうやってデッキリストを見てきての感想です。

「ゴルガリが板」なんて声もありましたが、《トカートリの儀仗兵/Tocatli Honor Guard》や《不滅の太陽/The Immortal Sun》が多く使われていたニュージャージーではゴルガリは1人もトップ8に入ることができませんでした。ゴルガリは前環境の赤黒のような対策されてもなお勝ち続けるような絶対的なデッキではないようです。ゴルガリと並ぶ板デッキと見られているジェスカイコントロールも、より厳しいマークを受ければ苦戦を強いられることになるでしょう。コントロールのほうがミッドレンジよりもメタられたときに弱いですし。Tier上位のデッキも相対的に地力が高いデッキではあるものの決して弱点のないデッキではありません。

 ローテーションで全体のカードパワーとゲームスピードが大きく下がった影響でこれまで構築レベルだと思われていなかったカードに光が当たるようになったというのも面白いところですね。《アゾールの門口/Azor's Gateway》《不滅の太陽/The Immortal Sun》《発見の道/Path of Discovery》《ミラーリ予想/The Mirari Conjecture》《セラからの翼/On Serra's Wings》……探せば他にもなにかあるかもしれないですし、それを見つけるのはあなたかもしれません。