【イクサランの相克】新環境スタンダードの見通し
イクサランの相克のフルスポ、出ましたね。
巷では「マーフォークや吸血鬼が組めそう」という声がある一方で「ティムエネとラムナプレッドの支配は覆らないだろう」という悲観的な声もありますが、実際のところどうなるのか。この3日ほどひたすらスポイラーを何度も繰り返し見たり一人(二役)回しをして新たに組んでみたデッキの感触を確かめてみたりと新環境について考え続けていたんで、その成果をここにまとめてみます。
マーフォーク
サンプルデッキリスト
4《植物の聖域/Botanical Sanctum(KLD)》
4《手付かずの領土/Unclaimed Territory(XLN)》
7《森/Forest(AKH)》
7《島/Island(AKH)》
4《クメーナの語り部/Kumena's Speaker(XLN)》
4《霧まといの川守り》
4《翡翠をまとう者》
4《深根の精鋭》
4《銀エラの達人》
4《マーフォークの霧縛り》
4《ジャングル生まれの開拓者》
4《蔦形成師の神秘家/Vineshaper Mystic(XLN)》
4《オラーズカの暴君、クメーナ》
2《送還/Unsummon(HOU)》
もしもあなたがこのマーフォークデッキを回してみたら、このデッキはものすごく強いぞと感じる瞬間がきっと一度はあるでしょう。
1マナクリーチャーが12枚採用されており手数で相手を圧倒することができますし、システムクリーチャーとアンブロッカブルが数多くあるため除去以外でこの魚の軍勢を止めることはほぼ不可能です。あっという間にあなたのマーフォークたちは横に並び、クメーナが動き出せばもはや手が付けられないことになります。
強力なブン回りがある。それがマーフォークの強みです。
カードのチョイスについて解説。
《ジャングル生まれの開拓者》を採用しているのは意外に感じられる方も多いのではないかと思いますが、自分はかなり優先度の高い1枚だと考えています。
《深根の精鋭》の能力を1枚で2度誘発させられますし、何よりも《クメーナ》のための頭数を揃えやすいというのが優秀です。横に並べてクメーナでやりたい放題するというのがマーフォークの目指すゴールのひとつなので、それに大きく貢献できるこのカードは是非採用するべき1枚です。
構えるデッキではないので不採用です。
探検は土地を伸ばしたいデッキや状況によって欲しいカードといらないカードがはっきり分かれるデッキでこそ輝く能力ですが、このデッキは土地は3枚あれば充分ですしひたすらクリーチャーの詰め込まれた金太郎飴タイプのデッキなので探検はあまり強くありません。よって不採用です。
アドバンテージより手数が大事なデッキなのでリパルスよりもアンサモンが優先されます。3マナは構えられない。
さて、ここで皆さんが一番気になってる点、つまり「で、ぶっちゃけマーフォークは強いの?」についてですが……お答えしましょう……
弱いです! 残念!
確かにブン回りはすごいですよ。でも、それ以上に無視できない欠陥があります。
それは、所詮横シナジーデッキに過ぎないということ。
マーフォークデッキに入っているカードはどれも単品で見れば貧弱なものばかりです。しかし上手くシナジーが噛み合うと強力になる。そのため除去が薄いデッキ相手にはシナジーの力を思う存分発揮できかなり強いです。
では逆に除去が多い相手に対しては…。
横にクリーチャーがいなければロードはただの熊、クメーナもただの2/4バニラです。そんなリミテッドレベルのカードを使っていて勝てるわけがない。
そして倒すべき仮想敵のティムールエネルギーとラムナプレッドはどちらも除去の厚いデッキです。こちらのシナジーは簡単に機能不全に陥ります。しかもサイドボード後はそれに拍車がかかる。マーフォーク側は青緑という色の都合上サイドボードの選択肢が非常に狭くこれに対抗することができません。
この欠点を克服するために単体で強いカードを採用してミッドレンジ方向に調整すればいいのでは? と思う方もいるかもしれませんが、その方向に行くとマーフォークの強みが薄まりティムエネの下位互換になります。この欠点はマーフォークデッキを組む以上受け入れざるを得ないものなのです。
結論 マーフォークは×
吸血鬼
サンプルデッキリスト
4《秘密の中庭/Concealed Courtyard(KLD)》
1《放棄された聖域/Forsaken Sanctuary(AKH)》
3《手付かずの領土/Unclaimed Territory(XLN)》
4《シェフェトの砂丘/Shefet Dunes(HOU)》
8《平地/Plains(XLN)》
4《沼/Swamp(AKH)》
4《空渡りの野心家》
4《薄暮まといの空渡り/Duskborne Skymarcher(XLN)》
4《薄暮の殉教者》
4《軍団の副官》
2《薄暮の使徒、マーブレン・フェイン/Mavren Fein, Dusk Apostle(XLN)》
3《冠毛の陽馬/Crested Sunmare(HOU)》
3《軍団の上陸/Legion's Landing(XLN)》
4《光輝の運命》
4《饗宴への召集/Call to the Feast(XLN)》
2《不可解な終焉》
2《イクサランの束縛/Ixalan's Binding(XLN)》
カードチョイスの解説。
ロード、アンセム、マーブレンフェインとある以上きちんと1ターン目からクリーチャーを展開できる意義は大きいです。1マナ生物を多く採用すると軍団の上陸を早いターンに変身させやすくなるというのも大きいですね。
ちなみに昇殿はインクの染みのようでいて意外と達成します。トークンが撒けるし除去もパーマネントとして残るんで。
構築レベルだと認識している人はかなり少ないカードなのではないかと思いますが、自分は吸血鬼におけるベスト2マナ域だと考えています。
アンセムを貼ると死ぬと2/2絆魂を出す3/2、つまりほぼキッチンフィンクスになりますし、そうでなくともラムナプレッド相手には信頼のおける1枚です。《アダントの先兵/Adanto Vanguard(XLN)》と比較すると後手のときの頼もしさが段違いですね。
さて、デッキの評価ですが……
雑魚! 乙!
まずこのデッキ、かなりアンセムへの依存度が高いです。
アンセムで強化されることを前提に細いカードを多く採用しているので、アンセムが引けていないと何がしたいのかよくわからないデッキになりがちです。
そして、遅い。
確かに1ターン目から展開していくことはできるんですが、そこから押し込む力が弱いんで結局ゲームを素早く決めることができません。
そうなると中盤以降の太さに優れるティムエネに捲られてしまいます。
しかも、横並べが得意でピン除去に耐性がある上に絆魂も多いんでラムナプレッドは得意…と見せかけて《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon(XLN)》で詰みます。
ロードやアンセムを使って「吸血鬼デッキ」という枠を守るように構築するとどうしてもそんな感じになってしまうんで、純粋な吸血鬼デッキではなく現環境にも存在する吸血鬼要素もある白単モニュメントを組んだ方がマシかもしれません。ただ、その場合新カードはほとんど入らないんですが…。
結論 吸血鬼は×
海賊
サンプルデッキリスト
8《山/Mountain(AKH)》
4《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins(HOU)》
4《イプヌの細流/Ipnu Rivulet(HOU)》
4《尖塔断の運河/Spirebluff Canal(KLD)》
4《手付かずの領土/Unclaimed Territory(XLN)》
4《勇敢な海賊》
4《狂信的扇動者》
3《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》
4《凶兆艦隊の向こう見ず》
4《風雲艦隊の疾走者》
4《再燃するフェニックス》
3《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》
4《ショック/Shock(AER)》
4《稲妻の一撃/Lightning Strike(XLN)》
2《削剥/Abrade(HOU)》
カードチョイスの解説。
瞬唱よりかなり弱いがケラルより少し強いという評価を下しています。ケラルはなかなか強かったんで、つまりこれは高評価です。瞬唱は強すぎる。比べてはいけない。
能力はオマケくらいに考えて過度な期待はせずに2マナ2/1先制攻撃としてぱっぱと出してしまうのが大事です。能力を使う場合も一番多い使い方は3ターン目の《霊気との調和/Attune with Aether(KLD)》です。
《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》と比較した場合、先制攻撃があるというのがかなり大きな長所です。ソプターなど細かいトークン相手にもじもじせずに殴りに行けるというのはメチャクチャ大きい。
こんなリミテッドっぽいカードわざわざタッチしてまで使う価値あるのかよと思うかもしれませんが、その答えは「ある」です。
対ティムールエネルギーの試合は中盤以降いともたやすく地上が止まります。《牙長獣の仔/Longtusk Cub(KLD)》《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》エネルギーたくさんとされたらもう無理。普通の地上クリーチャーはすべて有効牌ではなくなってしまいます。
だから、そんな状況でも有効牌として機能する回避能力持ちは極めて重要な存在なのです。
元々この枠は《風雲船長ラネリー/Captain Lannery Storm(XLN)》だったのですが、ラネリーが弱すぎたというのもこのカードを採用に至らしめた大きなポイントです。
現状イクサランの相克のトップレアですが、本当にこのカードに値段分の価値があるのか疑問に思っている方も多いでしょう。
お答えします。あります。というか2000円台前半だったら安いです。
ティムールエネルギーが《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》と《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》を抱えていてこれを出されたときのことを想像してみてください。…死にますね? 2枚目の除去を引くまで殴られ続けることになるわけですが、赤いデッキ相手に1枚で8点なり12点なり喰らってたら死にますね?
はっきり言ってこのカードは無茶苦茶です。《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》や《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》といった同色同マナ域の環境屈指の強カードと比較してもより優れているレベルです。難しく考えずにとりあえずデッキに入れましょう。
青タッチしていますがこのカードは不採用です。この世の中には《つむじ風の巨匠/Whirler Virtuoso(KLD)》というカードが存在するんですよ。ティムールエネルギーが環境に居座り続ける限りこのカードの出番はやってこないんで、買おうとしている人は思いとどまった方がいいと思います。
さて、デッキの評価ですが……
つよい(^0^)
まあベースがまんまラムナプレッドなんで強いのは当たり前なんですが、それだけでなくクリーチャーを海賊ベースにする意義も大きいように思います
1マナ2/2は《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》より明確に強いですし、モグファナも《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》より一概に劣っているわけではありません。《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》と赤瞬唱、《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》と2/2速攻アンブロの比較も海賊側が劣っているかというとそうは言えません。
要するに、全体的なクリーチャーの質は通常のラムナプレッドと比べて大きく落ちることはなく、弱かった《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》のスロットがより強い1マナ2/2になっているわけです。これだけでクリーチャーを海賊ベースにする意義は充分あると言えるでしょう。
もうひとつの海賊ベースのメリットはサイドボードに《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade(XLN)》を採用できることです。
上でマーフォークと吸血鬼は弱いと書きましたが、それはあくまで僕の判断に過ぎません。そういったデッキを使う人は必ずいるでしょう。マーフォークや吸血鬼、あるいはトークンといったTier2~3デッキ相手に劇的に刺さる1枚を使えるというのは大きなメリットです。
結論 海賊はラムナプレッドのバリエーションとして有力
青黒コントロール
サンプルデッキは省略。
イクサラン環境の序盤に世界選手権で活躍したもののその後消えていった青黒コントロールですが、実はなにげにイクサランの相克で収穫があります。
《ヴォーナの飢え》は青黒コンからすると通ると致命的な《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》を除去できる貴重な1枚ですし、
《渇望の時》と《黄金の死》は苦手なラムナプレッドに対する相性をいくらか改善してくれる可能性を秘めたサイドボード候補です。
元々ティムールエネルギーには相性のいいデッキなので、ラムナプレッドに対する相性が改善されれば再びメタゲームに舞い戻ってきても不思議ではありません。
ティムールエネルギー
サンプルデッキは省略。
環境最高の除去は《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》です。《闇の掌握》や《停滞の罠》がスタン落ちし、赤以外の除去の質が大きく下がったことにより《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》の価値は相対的に上昇しました。イクサランの相克で黒や白に高性能な除去が追加されることを期待していたのですが、特になかったので今後3か月も《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》が飛び抜けて強い除去であるままです。
そして環境最高のアドバンテージカードは《ならず者の精製屋/Rogue Refiner(AER)》ですし、土地がいまいち弱く3色デッキが組みづらい中《霊気拠点/Aether Hub(KLD)》《霊気との調和/Attune with Aether(KLD)》《導路の召使い/Servant of the Conduit(KLD)》のあるエネルギーだけはマナベースが強固で各色のパワーカードを使うことができます。
ギデオンやアヴァシンは落ち、イクサランの相克に白や黒のダブルシンボルのパワーカードはなかったのでエネルギーで使えないパワーカードというのも今やありません。
つまり、ミッドレンジの世界でティムールエネルギーの地位は安泰です。今やティムール以外のミッドレンジは存在が許されていないと言っても過言ではありません。
ティムールが強いのはわかり切っている。では、新カードはティムールに変化をもたらすのでしょうか?
土地を伸ばしたいティムールエネルギーにとって、土地を探す性能の高い《翡翠光のレインジャー》は良い選択肢たりえます。使われる可能性は充分にあります。
ただ、自分はあまり魅力的に感じていないです。
3マナ域は《ならず者の精製屋/Rogue Refiner(AER)》と《つむじ風の巨匠/Whirler Virtuoso(KLD)》の方が優先度が高いですし、9枚目の3マナ域が欲しいかというと微妙です。ダブルシンボルなので《尖塔断の運河/Spirebluff Canal(KLD)》を2枚引いたときに弱いのもマイナスポイント。
《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》と比較した場合、《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt(XLN)》《排斥/Cast Out(AKH)》《イクサランの束縛/Ixalan's Binding(XLN)》《慮外な押収/Confiscation Coup(KLD)》に耐性がないことと、《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》で突破されてしまう点で劣る1枚です。
しかし逆に言えばそれ以外のすべての点でフェニックスはハイドラに勝ります。
飛行は攻防で役に立ちますし、相討ちに差し出したときに相手に余分に除去を消費させられます。
地上のブロッカーとしての信頼度では《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》のほうが勝るのですが、結論としては自分の考えは「フェニックスを優先すべき」です。
なぜなら、相手にフェニックスを出された場合にハイドラでは対抗できないけれどフェニックスならば同じ土俵に立てるからです。
純正ティムールか4Cか。
《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》はフェニックスを立てられていると殴りにいけませんし督励しても損をします。
一方《スカラベの神/The Scarab God(HOU)》は除去1枚でフェニックスを対処できるようになるカードです。
よって、4Cのほうが優れているように思います。
現在メインボードでは1~2枚採用されていることが多いカードですが、最もスマートにフェニックスをシャクれるカードなので、フェニックスが大流行した場合3枚目が採用されるようになるかもしれません。
最後のまとめ
部族デッキにはTier1で戦っていけるだけの地力はなく、残念ながら今後もティムールエネルギーとラムナプレッドの支配は続くでしょう。ただし、コントロールはそこに割り込みうる可能性を秘めています。
イクサランの相克は強いカードが少ないものの、《再燃するフェニックス》だけは強烈なカードパワーがあります。赤いカードなのでティムールエネルギーにもラムナプレッドにも難なく採用でき、使用率の高いカードになる可能性が高いです。全体的に弱いセットの中で1枚だけ飛び抜けてよく使われる神話レアがあった場合その値段は恐ろしいことになるので、難民化する前に揃えておくことをお勧めします。
他のカードはどうせ通常レアやアンコモンなんですぐ使うものだけ買っておけばいいでしょう。